第25回認知症当事者勉強会報告

第25回認知症当事者勉強会全体写真 認知症当事者勉強会

第25回当事者勉強会報告


日時:2023年6月17日(土) 13:00 ~ 18:00
場所:三鷹駅前コミュニティ・センター 地下会議室

第25回 勉強会のテーマ『大逆転の痴呆ケア』から20年 いま何が問題か

趣旨

2003年は変わり目でした。
この年出版された『大逆転の痴呆ケア』は、著者の和田行男さんの名を世に知らしめただけでなく、「何も分からない人、何もできない人へのお世話」という旧来の介護から新しいケアへの転換を促す「革命の書」。ここから多くの動きが始まりました。
またこの年は、日本における「認知症当事者活動元年」でもありました。
オーストラリアのクリスティーン・ブライデンが著書の出版に合わせて来日講演。認知症と診断された本人の立場から、医療やケア、社会に求めるものを語り、その後日本で多くの「認知症当事者」が声をあげるきっかけを作ったのです。
それから20年。何が変わって、何が変わらないのか、これからどうするのか。

和田行男さんとともに考えます。

地域認知症サポートブリッジでは、認知症当事者勉強会の活動を応援しています。

和田 行男さん紹介
和田 行男(わだ ゆきお)  介護福祉士
1955年、高知県生まれ。日本国有鉄道職員として車両修繕に従事したのち、
1987年に介護業界に転身。特別養護老人ホーム勤務などを経て、
1999年に東京都初の認知症高齢者グループホーム「こもれび」施設長。
2003年から株式会社大起エンゼルヘルプで、デイサービスやグループホーム、小規模多機能ホームなどを統括。
著書『大逆転の痴呆ケア』など。

開会

丹野さんの「お福の会宣言」朗読から始まりました。

報告

丹野智文さんや山中しのぶさんなど認知症と診断された当事者の方や事業所の方々、様々な公的支援センターから、また医師・看護師・製薬会社の方、ジャーナリスト、介護の会など様々な立場の方が集いました。

約3時間に、和田さんの著書『大逆転の痴呆ケア』や経験に基づいた話を中心に、それぞれの参加者が自分自身も考えながら進められました。それぞれ認知症に関連する人たち(当事者)ですが、立場や考え方、価値観、環境が異なるため、どのような内容にたどり着くのか興味深かったです。

和田さんの話の中には、制度の違いによるサービスの差や、「人」への信頼、「優しさ」ってなんだかわからない、相談事に落とし所をいつも考えていること、また、就労支援は間違っている、困っている人を助けることは当たり前という考え、そして「婆さんは僕の宝」というようなエピソードもありました。和田さんは、違うと思うことについては「違う」、わからないものについては「わからない」と話されました。率直な言葉には驚かされる場面もありましたが、「人として生きる」という視点に焦点を当てていたと感じました。

さらに、この本が23年前に書かれた時と比べて、人々が自分自身が認知症であると言える社会になってきたことは良いことだと述べていました。和田さんは自身が死ぬまで認知症に関わっていく覚悟についても話されました。

最後に、和田さん自身によって『大逆転の痴呆ケア』の巻頭に書かれた文章、「まだ見ぬ介護者へ」が朗読されました。

まだ見ぬ介護者へ

私はすべてを失ったわけではありません
どんなことでも まず問いかけてみてください
何でも まず私の意思を確認してください
食べる 食べない 行く 行かない 暑い 暑くない?
どうしたのって 聞いてみてください
訳のわからないことを言うかもしれませんが 私は病気です
痴呆という状態にあるのです 進行性の難病と言ってもいいでしょう
察して下さい よーく見てください

私はすべてを失ったわけではありません
まだまだ若いものに負けないこともたくさんあります あると思います
でも 若いことと同じようにはできないでしょう
あせらせないでください じっと見ていて下さい
見ていて 少しだけ手を貸してください
人間の機能や能力は 使わないと使えなくなると 若い頃に聞きました
生きるためにたたかう力はまだまだ・・・・・・

私はすべてを失ったわけではありません
外にだって自由に出たがるでしょう 雲や星が大好きです
外に自由に出られるようにしてくれさえすれば 自分で出かけます
でもきっと目的地には着けないでしょう 戻れなくなるでしょう
そっとついてきてくれると嬉しいです
とまどったり 不安げになったら そっと傍に来て
どうしたのって声をかけてください
きっとあなたのことが天使様に見えるでしょう

私のことを笑ってくれていいですよ
きっとおかしなことを言ったり おかしな格好をすることでしょう
でもお願いです 陰で笑ったり 自分一人だけで 仲間同士で笑わないで
私にも笑っている訳を教えてください
きっと私も笑いの仲間に入り いっしょにおかしむでしょう
だって おかしいことはおかしいと 私にもわかるから

私はすべてを失ったわけではありません
私のことを痴呆老人なんて呼ばないでください
私の名前は 和田サン です
私のことをわがままなんて言わないでください
私はあなたと同じ人間です
ただ痴呆という難しい状態になっただけです
私の努力ではとめられないんです